アーテック

50年以上にわたり日本の子どもたちが使う学校用の教材や知育玩具の製造を手掛けてきたメーカーの株式会社アーテックが、新しい事業として2015年から本格スタートさせたロボットのプログラミング教室「アーテック エジソンアカデミー」。文科省が2020年度から新学習指導要領にプログラミング教育を加える方向性を示し、ますます子ども向けのプログラミング教室に注目が集まる中、少し他社とは異なる背景で始まった「エジソンアカデミー」の大阪にある本部教室を訪ね、その違いと強みを取材しました。

アーテック本社
大阪の本社ビルはJR久宝寺駅から徒歩10分、アーテックは教材や知育玩具の製造販売メーカー 。

プログラミングは新しい教育として期待

ロボット教室とは基本的にIoT(Internet of Things)と呼ばれる、パソコンなどのIT関連機器をインターネットで接続した「モノづくりに必要な情報伝送路の仕組み」、すなわちプログラミングを教えるところです。

しかし、その教室の内容は運営する会社の教育方針によって様々。ロボットを組み立てる工作的要素よりも、プログラミングを集中的に教える教室、ロボットを作る過程を重視しコミュニケーションやモノづくりの原点に触れることが大切とする教室など中身もカリキュラムも多様化しています。一言でロボット教室といっても、子どもの年齢や適正に合わせた教室選びが大事だといえるでしょう。

その中で、他校とは少し違った志向で、ロボットのプログラミング教室「エジソンアカデミー」の運営を始めたのが株式会社アーテックです。

アーテックは、50年以上日本の教育現場で教材や知育玩具を作り続けてきたメーカーです。その会社の新規事業ということですが、興味深いのは、この事業が自社の教材をグローバルな視点で見直したことが始めるきっかけだったという点です。

アーテックで「エジソンアカデミー」の運営を担当する法人事業部の梶原邦夫さんは、「アーテックは図工や美術など学校教材専門メーカーとして1960年に創業した会社です。自社のオリジナル教材や知育商品は9000以上。その販売が会社の柱なのですが、3年ほど前に、ビジネスを海外にも広げたいと国際見本市へブースを出展しました。その時、海外のブースに目を向けてみると、数字や空間といった子どもの算数のリテラシーを学べる教材が豊富にあることに気がつきました。日本の算数教材を見てみると、おはじきや色板、数え棒といった昔からあるものばかりで、バリエーションや進化のなさを痛感しました。そこで会社として開発したのが「Artecブロック」でした。これは算数の計算式や幾何学構造の理解に役立つ要素を持つ、今までにない理想のカタチのカラーブロックなんです」と教えてくれました。

「Artecブロック」は、メインパーツがキューブ状の不思議な形で、各面に複数の穴があり、1本の突起がついています。穴の位置を変えながら突起を差し込み、組み立てていくといろんな形になります。実際に触っていると構造上の仕組みなどが理解出来るようになり、遊びながら数学や物理的な感覚を芽生えさせる、とても面白いブロックでした。

アーテック教材
基本形は写真の中の白いキューブ型。パーツを組み合わせて様々な形にすることが出来る。

そして、梶原さんには海外でもう一つ気づいたことがありました。それはプログラミング学習の大切さです。

「海外では当たり前のようにプログラミング教育が行われていたのです。イギリスでは5歳~16歳までプログラミング学習が義務化されているそうです。また、ヨーロッパの他の国々でも積極的にプログラミング教育を進めていました。日本では、そんな外国製のプログラミング教材がチラホラあるだけで、しかも教育の現場ではさほど重要視もされていませんでした。私たちはこれまで、メーカーとして作って売ることに集中してきましたが、これからの時代はプログラミン教育そのものが求められるのではないか。そう考え事業として検討を始めました。そして、自社で開発した「Artecブロック」に、「Scratch(スクラッチ)」という世界的にも有名なプログラミングの環境を独自にカスタマイズしたソフトを組み合わせたロボットプログラミング教室「エジソンアカデミー」の開講に踏み切りました」と、教室事業の誕生についても、海外との比較で見つけたビジネス分野だと語ってくれました。

アーテックテキスト
プログラム環境のベースは世界中で利用されているマサチューセッツ工科大学のメディアラボが開発した「Scratch(スクラッチ)」。

世界に通用する人材育成を目指して

アーテックの本社ビル5階には、「エジソンアカデミー」の本校があります。4月開講の4クラスと7月開講の2クラスが、それぞれ月2回の授業を約半年間行っており、全部で約60名の子どもがここに通っているそうです。

月2回の授業が1セットで、1回目がテキストに従ってロボットを製作、2回目がそれを発展させたオリジナルロボットを作って動かすカリキュラムになっています。

教室は学年別ではなく、同じ開講日に通塾を始めた小学2年生から中学生までが一緒になって同じ内容の授業を受けます。

見学した日の教室は、小学校2年生から5年生が集っていましたが、どの子どももどんどん自分でトライ&エラーをくり繰り返し、先生の指導のもとロボットの製作を進めていました。

小学2年生がパソコンの画面を見ながらスクラッチをいじり、ロボットの性能を夢中になって高めている様子がとても印象的です。画面で指示した動きを、離れたところにあるロボットで再現させるというのは、IoTのモノづくりで、プログラミング的な考え方をしなければなりませんが、小学校低学年でも、考え方をちゃんと理解出来るという証明です。

アーテック授業の様子
衝突回避自動車基礎編の1回目の授業の様子。女の子も参加。

 

アーテック授業の様子
年次に関わらず子どもの理解力に合わせて指導。教室で使うロボット教材の開発を担当したアーテックの社員も教室の先生として教えていた。

FCの指導要領は地域の特性で柔軟に

梶原さんは「エジソンアカデミー」を全国展開するにあたり、FC(フランチャイズ)の教室では地域性や参加する子どもの構成などを重視し、本部教室が行っている指導を特にマニュアル化していないといいます。地元の持つ個性を活かした教室が良いとのことでした。

教材とテキストの中身をしっかりとしたものにしているので、直接の指導方法については各教室のスキルで対応してもらうという考え方は、学校教材の販売に類似しているところです。しかし、あえて教室の運営にこだわったのは、子どもたちの顔を直で見ることが、今後の新教材の開発に役立つからだとのこと。「メーカーとしての立場ですと、残念ながら売ってもその先の子どもたちの反応が分りづらいのです。教室であれば子どもたちの生の声がFCであっても寄せられますし、本部教室にもこうやってたくさんの子どもが通ってくれます。子どもたちの様子を見て、何が必要なのか常にアンテナを張る。そうすることで必要とされるものが分かる、会社にとってそのメリットは大きいです」という梶原さん自身も、教室の運営に携わるようになって、いろんな発見をしたといいます。

「子どもにもいろんなタイプがいて、ロボットの動く距離をプログラミングする場合、先に進む距離を計算し数字を入れ、その結果進んだ距離が正しいかを測る子どもいれば、適当に数字を入力し何センチ進んだかを測り、そこからだいたいこれくらいと数字を調整しながら適正値を見つける子どももいます。やり方は違いますがモノの動きの仕組みを知り、プログラミング的な考え方で説明が出来ればいいのです。どちらの方法も子どもたちがこうしたら、こうなったという理論的な考え方が出来ることが大切で、「エジソンアカデミー」の目的は本格的なプログラマー教育ではありません」と梶原さん。そして「まだまだ新しい教室ですから、教材の中身やFCのへ対応も、これかられから柔軟に考え取り組んでいきたいと思います。ここでの学びが、次世代を担う子どもたちにとって有意義なものになることを目指します」とプログラミング的な考え方は子どもの可能性を伸ばす教育であることを強調しました。

そんな子どもの目線を大切にする教室では、子どもたちが先生と一緒になって自分たちのロボットを思い通りに動かすためのロジックを楽しそうに学んでいました。

ロボット動作確認
入力したプログラム通りに進むか確認。

 

アーテック授業の様子2
自分の組み立てたロボットでポーズ! 先生も子どももモノづくりへの強い思いが伝わってくる授業。

多面的な展開で、教室の可能性を広げる

「エジソンアカデミー」では、今後全国の教室を一同に集め ロボットの競技やプレゼンテーションを競うロボットコンテストの定期開催を目指しているそうです。

2016年はそのプレ・イベントとして関西近郊の教室を集めた「ERCエジソンアカデミーロボカップ2016」を夏休みに開催。今後につなげていく予定です。

またアーテックは、ソニーが「Artecブロック」を一般向けにデザインし販売をするロボットプログラミング学習キットKOOV(クーブ)での話題作りや、教育事業を手掛ける学研との提携で「もののしくみ研究室」を展開するなど、長年手掛ける教材のノウハウとネットワークで積極的に外部との連携を展開しています。そのメーカーとしての取り組みも、子どものロボットプログラミング教育全体の発展につながっていると感じます。

近年子どものロボットプログラミング教室に親や教育関係者が注目する理由の中には、スマートフォンやタブレット端末など急速に普及したインターネット環境に対し、プログラミングがこれから不可欠な知識であること、そして新しいモノつくりのカタチとして、関連する仕事の増加が見込まれることなど現実的な要素が挙げられます。

これからは、もっと実践的な教室を親は求めてくるかもしれません。ただ子ども向けの教室として、その中身は子どもが本来もっている自由な発想を損なわない教材や指導が大切です。子どもたちに必要なのは、プログラマー養成学校ではないと思います。

そういう子どもの育みを応援するロボットプログラミング教室として、日本の子どもの教育を50年以上考え続けてきた会社が、子どもたちに世界の舞台で活躍してほしいと立ち上げたのが「アーテック エジソンアカデミー」。これからも、大きな期待が寄せられるのではないかと感じました。

アーテックロゴ

本部教室

〒581-0066 大阪府八尾市北亀井町3-2-21株式会社アーテック内5F

平日の受付時間 10:00~17:00

072-990-5614

メール:academy@keepon-web.com

http://edisonacademy.artec-kk.co.jp/robot/